https://math.stackexchange.com/q/4746156
での「既約環のWikiの記事は正確なのかどうか?」という Linuxmetel さんの疑問に対する math54321 氏の回答に,
(x)⋉E(k)
という半直積で使われる記号が使われた対象が登場したが,これはおそらくイデアル化だとおもわれる。以下では,まず,イデアル化について説明する。
<定義>
R を可換環,M を R 加群とする。このとき,R⊕M は次の演算で環となる:
(a,x)+(b,y)=(a+b,x+y),(a,x)(b,y)=(ab,bx+ay)
この環を R 上 M のイデアル化 といい,R⋉M で表す。
<注意>
写像 f:R→R⋉M,x↦(x,0) と p:R⋉M→R,(x,a)↦x は環の準同型である。ここで,Kerp=0×M なので,0⋉M は R⋉M のイデアルであり, p と f の合成により M を R⋉M 加群とみなす。これにより, R⋉M 加群として 0⋉M と M は同型とみなすことができ,up to iso で R⋉M が R 上 M のイデアル化と言えるわけである。
<命題>
次が正しい。
- 1. 0⋉M≅M (as R⋉M - mod )
- 2. R⋉0≅R (as ring)
- 3. (0⋉M)2≅0 (as R⋉M - mod)
- 4. R⋉M が ネーター環であるための必要十分条件は,R がネーターでかつR 加群 M が有限生成であることである。
- 5. Spec(R⋉M)={p×M ∣ p∈Spec(R)}
<証明>
1. は前に説明し,2. , 3. , 5. は簡単なので省略し,4. のみ証明する。
(⇒):R⋉M がネーター環なら,環の準同型写像 p により R もネーター環である。1. より,R⋉M 加群として M≅0⋉M なので 0⋉M の R⋉M 加群としての有限生成性から,M も R⋉M 加群として 有限生成であることがわかる。
(⇐):f:R→R⋉M により,R⋉M を R 加群とみなすと,R⋉M=R⊕M であるから,これは有限生成である。R⋉M のイデアルも R 加群とみなすと,それは R がネーター環であることから R 加群として有限生成であり,よってR⋉M 加群としても有限生成である。R⋉M の任意のイデアルが有限生成なので R⋉M はネーター環である。